特集 病院の薬局
治験薬について
久保 文苗
1
1関東逓信病院薬局
pp.39-42
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202400
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1.治験薬とは
総合大病院あるいは特殊の専門病院では,医薬品製造業者からの要請によって,未発売医薬品の臨床試験を引き受けることが少なくない。私どもはこのような医薬品を通常"治験薬"と呼んでいる。それではなぜこのような試験の依頼がなされるかというと,もともと人体に使用する医薬品であるから,発売に先立って薬効の確実性,その適用範囲,副作用,毒性の有無などについて実際に人体に試用してみる必要のあることは当然であり,さらに手続上からも,薬局方に収載されていない医薬品の製造承認(薬事法第14条による厚生大臣の承認)を申請するときには,次のような基準による臨床試験データを添えて申請しなければならないことになっているからである。すなわち,一般の医薬品の製造申請の際には,2か所以上の医療機関(完備した設備を有し,経験ある医師のいる)において60例以上の臨床試験データを,また特に悪性腫瘍,結核などの特殊疾患を対象とする医薬品については,3か所以上の医療機関において100例以上のデータを集めて提出することになっている。このような理由から,医薬品製造業者は新しい医薬品を開発して発売しようと企画したときには,その製造の承認を受けるまでの過程において,適当な病院に治験薬を提供して臨床試験を依頼しているのである。
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