特集 看護
病院看護と公衆衛生
曾田 長宗
1
1国立公衆衛生院
pp.327-331
発行日 1960年5月1日
Published Date 1960/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201653
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I.病院機能の拡大
病院の出来始めは,傷病の苦しみになやむ人達の苦痛をとりのぞくことを,主なる目的としていたものと思われる。しかし,その後,病者が家庭内にいつまでも,とどまつているのでは,同居する家族も看護につかれ,家業をつづけることも出来ず,ことに伝染性の病気のような場合には,感染の危険さえあるので,傷病者の手当てのためのみでなく,家族や近隣に住むもののためにも,これを特別の施設にうつして,介ほうすることが必要と考えられた。時に,病院とも認めにくい避病舎,隔離病舎が設けられたりしたことも,そのためである。今日では,たとえ他の多数の社会人の健康を守るためとはいえ,病者の人命をおろそかにするような考え方は許されないが,傷病者に及ぶ限りの手当てをすると同時に,家族や近隣の人達に病気をうつさせないよう,新しい患者を発生させないようにすることも,病院の基本的な社会的任務の重要な一面であることが,一般に広く認められるようになつた。
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