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総医療費と国民所得の関係—特に1929年より1953年に亘るアメリカ合衆国の総医療費についての分析
岩佐 潔
1
1病院管理研修所
pp.39-44
発行日 1956年10月1日
Published Date 1956/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201153
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緒言
今日の医療費が若し家計から直接支払うことが要求されるならば,非常な重荷としてその家計をかきみだし時には破滅に導くことは一般に認められている。最もありふれた病気の一つである急性虫垂炎を例にとつてみても,入院して手術を受けるとなると,良好な経過をとつた場合で8,000円はかかる。即ち平均入院日数は8日で完全給食,完全看護,完全寝具の病院とすれば3,700円,手術料3,125円,これに手術前後の処置料が1,000円乃至2,000円加わる。これは病院に直接支払う医療費であり,これも社会保険点数を基準として医療費を請求する病院の場合であり,間接的な費用がこのほか可成り必要となる。若し家族員の1人に胃癌が発見された場合であればそれが早期に発見され手術が順調に出来て軽快退院したとして入院日数は普通30日で直接医療費が最低4万円となる。
所で一般勤労者世帯現金実収入状況を見ると総理府統計局家計調査報告昭和29年10月分によれば,家計の52%は24,000円以下の収入しかない。流行値を示す20,000〜24,000円階層の家計を標準的家計と見て,これと前記医療費とを比較するならば,病人が発生した場合医療費負担が如何に荷重であるかは明白である。特に疾病が長期に亘つたりその為に家計収入が減少する様な場合の困難さは今さら申すまでもない。この様に各家計の医療費負担能力に関しては一般的に言つて非常に低いと考えざるを得ない。
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