主張
国民医療費を国民総生産対比9%に
I
pp.869
発行日 1992年10月1日
Published Date 1992/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900196
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共産主義国家の崩壊とともにイデオロギー闘争の時代が終焉した.人類と他の自然との共生が叫ばれ,企業のあり方が問われ直している今日,われわれは個人の自由と規律の下に精神的かつ物質的な豊かさの方向を模索し始めている.
この変化の中でアダム・スミスが頻繁に引用されている.スミスはどちらかというと経済学よりも道徳哲学に重きがあったと論じられている.スミスは手放しの自由放任主義者ではなく,自由競争に内在するルールを想定していたとも言われている.他人の目を通すことにより自制心が自分の中に定着し,自身を客観的に見ることができ,自分の中の他人の目が良心として育つのである.さらに,社会資本の充実は私的資本の採算にだけ委ねておくわけにはいかず,この点においては国家による公共的機能の必要性を認めていたわけである.ただし,その機能の発揮の原則はフェア・プレイに基づく自由競争の自立にあった.アダム・スミスといえどもその資本主義論の中で社会政策としての社会保障の重要性を指摘していた.
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