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あとがき
小西
pp.56
発行日 1954年2月1日
Published Date 1954/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200778
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昭和29年の夜明けと共に,新年度予算を廻る各省と大蔵省との間の接渉が俄然活気を呈し始めた。1兆円以内とい5緊縮財政の線が再確認されて以来,バターか大砲かの論争は頓に表面化し社会保障の問題が日々の新聞の紙面を賑わす。理屈の上では兎もあれ現実に生活保護法の適用が引きしめられるとなると,その皺が病院に寄せられるであろうことは目に見えているので,病院も安閑としてはいられないことになる。併し幸い世論がものを云つて大蔵省案が直つたことは,先ずもつて御同慶の至りであつた。併しこれで安心するのはまだ早い。かかる風潮はこれ位のことでおさまるものとは考えられないし,再軍備せずと折ある毎に言明している現政府の下に於てすらこの態たらくであるから,愈々本格的に再軍備の線が打出された暁のことは想像に難くない。
今日我が国の医療の実態は,医療の理想形態には程遠く,而も昔と異りゆとりのない今日の医業経済の実態からして,稍もすると病院に赤字は当然だ,という諦めに以た考え方が出ない訳ではない。併し,医業も矢張り事業であるからには赤字を原則とした経営は健全とは云えない。それなら,分に応じた医療内容を伴う経営形態をとるも止むを得ないということになる訳であるが,併し,上述の諦めに便乗した経営上の非能率,不合理を訂す努力も惜しんではならぬと思われるのである。
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