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メキシコ雜感
東 龍太郞
1,2
1厚生省医務局
2日本体育協会
pp.2-5
発行日 1953年9月1日
Published Date 1953/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200689
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去る4月にメキシコ(mexicoと書いて,メヒコと発音するのが正しいらしいが,ここでは慣用の英語読みに従つてメキシコとする)へ行つて来た。戦後7回目の海外旅行ともなれば,洋行ずれがしたとでもいうのか,こんなことではいけないとは思いながら,メキシコについて充分な予備知識も持たずに,それこそ行き当りばつたりの出たとこ勝負で,文字通りぶらりと出かけて来た。そしてメキシコへ行つたとはいうものの,実際に見聞したのはメキシコ市(Mexico City)だけに過ぎない。それも現地へ着いてはじめて,メキシコ市とはこんな所であつたのか,と感心したり驚いたり,又時には多少軽蔑したりしたという心細さであるから,ここに書くことにも思い違いや聞き違いがあるかも知れない。予めお断りしておく。
さて,メキシコ市とは通称であつて,正しくは,おなじみのWashington D. C.(District of Columbia)と同工異曲のMexico D. F.(Dis-tricto Federal)であるらしい。海抜2,300米に近い高原に位しているから,気圧は600mmHg以下,従つて普通の釜では御飯はよく炊けないそうな,急いで階段を馳け上ると息切れがするのも,あながち歳のせいや気のせいばかりではないと思う。フツトボールのキツクが平地よりも5〜10米もよく伸びるといわれ,遠征して来るテニス選手が実力を発揮し難いのも,皆この稀薄な空気のお蔭である。
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