隨感隨想
抗菌性物質研究雜感
細谷 省吾
1,2
1東大
2傳研第一研究部
pp.85-86
発行日 1950年8月15日
Published Date 1950/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200697
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アメリカに於けるペニシリン,ストレプトマイシン,クロロマイセチン,オーレオマイシンの發見とその工業生産の成功,臨床應用の普及とは微生物性疾患の治療上文字通り劃期的の革命を成就した。しかもネオマイシン,テラマイシンなど有望を傳えられる後詰の陣が續々と名乘りをあげる盛觀には三嘆を禁じ得ない。
一方吾國に於ては國歩艱難な現状にあつても政府はたとえアメリカとは桁違いとは云え,尨大な研究費を抗菌物質の實際的生産のために支給して目的達成を促してゐる。即ち昨年度はストレプトマイシンの製造及臨床實驗のために六百二十萬圓本年度六百萬圓,クロロマイセチンの同じ目的のために百七十萬圓が交附された。國産ペニシリンは質的には米國品と比肩するようになり,量的にも一應は國内の需要を滿たすに足り,生産價格も低下の一途を辿り現在では包装費の方が中味のペニシリン自身よりも高いと云われる程度になつた。ストレプトマイシンも學界業界の協同研究の成果はよく優秀菌株の發見,培義法特に精製法の重大な進歩をもたらし,國家の規準に合格する製劑一瓦百萬單位の生産費が三百圓位になりそうだと云うから,國産品がもつと廉く現在のペニシリンのように充分患者にゆき渡る日も迫つた。
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