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医療諸施設の結合について—英国の発展史とChicagoのMedical Center
岩佐 潔
1
1厚生省医務局医務課
pp.2-5
発行日 1953年4月1日
Published Date 1953/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200621
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1.結合の必要
医療諸施設を結合してすべての人に必要にして十分な綜合的医療を与え得る体制を確立することの必要については,現代の我々の感覚からすれば自明のことに思われる。
しかしこの結合の問題が具体的に検討され現実面に移されてきたのは決して遠い以前のことではない。社会の又は社会についての考え方の変化が医療制度の又はそれに関する考え方の変化を生ずるのであつて,国民の医療についての責任は長く各個の医師にまかせられてきた。それ故に医師は各自資本主義的な自由競争をすると同時にある程度の仁術を施すことを社会から要求された。しかし医療の責任を医師のhumanityにゆだねると云うことは社会或は国家のinhumanityを示す様なものである。特に医学の進歩による医療施設の近代化と諸設備諸機械の発達は個人医師による病院設立の可能性を減少してきたし,一方医学の専門的分化は多数専門医間の密接な協同作業を要求することになつた。かかる状態において諸医療の責任を各個の医師にまかせることは不可能となつた。人々は疾病に応じてあらゆる種類の専門医を要するのに,地域的な医療施設の不足や相互連絡の不充分の為に必要な医療を受けられないと言うことは国家にとつて許し難い問題である。
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