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病院の完全看護を禮讃する—一入院患者の聲
一入院患者J
pp.46-48
発行日 1951年2月1日
Published Date 1951/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200282
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私は冬の山でスキー中轉倒して骨折し,或る大學の附屬病院に入院し,約4ヵ月の後種々の事情で今度は或る公立病院に轉院し,殘暑をすぎてから漸く癒つて退院しました。
2つとも今の日本における代表的な病院に屬するものでありましようが,6ヵ月半に亘るかなり永い入院生活の中に偶々病院を移つたため,極めて對照的な兩病院の機構を知ることが出來,隨分異なつた印象を得ました。その最も大きなものは完全看護の點に關してでした。その大學附屬の病院においては,殆んど全面的に附添制度を温存し,他方その公立病院においては,兎も角附添制度を廢止して特殊な場合以外病院の手による完全看護が殆ど實現されていた事による,その差違においてでした。26時中眼を離さないで病人を看護するため個人的に附添をつけるということは,そういう人がいればいろいろな便宜もあるにはあるでしようが,患者乃至その家の經濟的・精神的負擔は莫大なものがあります。附添用としては不完全な生活設備と給食設備の病院に,殘餘の家族から分離して家族の一人が附添う場合でも起居の場所食事の調達,別居による負擔の増大等かなりの不便と經濟負擔を忍ばねばならないでしよう。ましてそんな家族人員に餘裕のない人若しくは家庭から遠く離れてその土地に來ているような人にとつて,代りに職業的な附添をつけるということは今の普通の經濟状態にとつて不可能に近い事です。
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