--------------------
病院のハウスキーパーとは
原 素行
1
1東京都立広尾病院
pp.16-19
発行日 1950年12月1日
Published Date 1950/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200241
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はしがき 病院の精神
病院には精神がなければならない。病院の精神は病院の各部門に夫々必要な活動の方針を示し,あらゆる病院職員が人道の為めに働くべきであるという奉仕精神の教育を授けることになる。病院は活きている有機体であつて,各部門の動きは夫夫異るが,一定の流れに従つて,行われるべきもので,恰もオーケストラと同じである,ゆうまでもなく病院長がそのコンダクターでなければならない。即ち各部門の動きが別々の考え方であるべき筈はなく,又そうあつてはならない,然しこの考え方は不幸にして,我国では常識とされていないように思われる。直接の診療だけを重視して,之れに関連する種々の条件に思いを致さない弊害は何故か多年にわたつて論議されなかつた,そして,時に論議される場合があつても,之れは科学的であるとは考えてもられなかつた。
病院が患者に対する考え方の一つとして,入院患者の全生活を預り,診療と並行して,患者の世話をするとゆうことが必要である。此の考え方は極めて単純のよおであるが,この中に病院の各部門の業務がおのずから明にされていると思う。我国では,殊に近来,患者の病院生活は極めて不便であり,且つ不愉快なものとせられ,しかも世人は之れを当然のこととして,少しも疑わぬのが常識のようであつた。
Copyright © 1950, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.