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山口縣の病院の概觀
山田 秀暢
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1山口県衛生部医務課医療
pp.19-26
発行日 1950年6月1日
Published Date 1950/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200151
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昨今の世情はどうやら落着を取り戻しつゝあるかに見える。長い買物行列もなくなつた,列車の乗り降りもなぐり合う必要もない。物価の鰻上りも止んだ様だ。数えれば多くの不愉快なことが次次と改められて来たものだ。すつかり常態に復つたとはいえないまでも,政治の貧困とか"デフレ"か"デイスインフレ"か等と議論するにも嘗ての殺気立つた目の色を見出す程のことはない様だ。
食べること,着ることの困難は余程緩やかになつて来て居る。ただ住むことの条件はそれ程に好くはなつていない,けれど住むに家がなく死に当面する人々の群を想像することもまずない。従て直接最も多く人の生命に関わる事がらの中,残る問題は"病い"ということになる。この事も公衆衛生の圧倒的勝利を表わすかに日本国民の死亡率は近年にない程低下した。これが死亡率減少の最低だろうと言う風に言う学者も多い程だ。然し全体から見た豫防効果が個々の人々に絶対の生命保障を与えることは至難と言わざるを得ない。
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