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高齢化が進むとともに,医療や介護サービスを必要とする高齢者は増加の一途をたどっている.これまで医療,介護サービスはそれぞれ共助とも言える保険の枠組みが準備され,その基金のなかで運営されてきたが,高齢化に伴いその仕組みだけでは賄いきれなくなり,一部公助とも言える税金を投入し維持されてきた.その税金負担を拡充することは,基金としてだけでなくサービス利用者,提供者側としても歓迎されることであった.そんななか,利用者はさらなるサービスを求め,提供者はさらなる効率よい事業を考え出す.しかし押し寄せる高齢化はそういった需要の増加を受け止めるだけの限界を超えている.いま,量的なサービスの拡充を図るばかりでなく,限りある資源のなかで質の高いサービスを実現できる新しいシステムづくりが求められている.その解決策の1つが今回の特集企画である地域包括ケアの取り組みである.
地域のなかの限りある施設,人材,財源をできるだけ有効に活用し,満足度の高い老後の生活を実現するために,地域内での関係者の連携が必要となっている.これまで医療資源に乏しかった地域ではこういった取り組みが進み,モデル的な事例の多くはそういった医療過疎の地域に見られていた.しかし高齢者の問題はいまや1つの地域の問題ではなく,都市部も含めた全国的な課題となっている.そこでは地域内で求められる医療,福祉ニーズに対して今ある資源を再確認し,地域のなかでは満たされにくいニーズに対して単に事業者の利益だけに走らず,お互いの枠組みを超えて補い合いながら自治体と一緒になって地域を支える姿勢が求められている.本特集ではそういった視点から参考となる事例を紹介し今後の示唆としたい.
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