連載 医療管理会計学入門・11
医療界における原価計算の体系と発展・現状―経営情報マネジメントとしての管理会計②
荒井 耕
1
1一橋大学大学院商学研究科
pp.146-150
発行日 2013年2月1日
Published Date 2013/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102460
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■医療界での原価計算の体系
前号で述べた原価計算の意義(目的)に対応するため,医療界には次元の異なる2種類の原価計算がある.すなわち,診療報酬設定などを目的とした一国医療提供システムを経営するための「共通原価計算」と,医療機関を経営管理するための「病院原価計算」である1).このことを認識せずに,共通原価計算として開発されてきた原価計算(次号で紹介)に対して,「病院での原価計算として不適切である」といった批判を聞くことがある.しかし,共通原価計算には病院原価計算とは異なる設計要件注1)があり,目的も異なる以上,この批判は的外れである.
また,どちらの次元の原価計算にも,“原価計算観”とも言うべき,基本思考を異にする複数種類の原価計算があり,さらに同一の基本思考に立つ原価計算でも,その志向性には異なるものが見られる.こうした異なる種類の原価計算をしっかりと認識しない議論は不毛である.そこで今回は病院原価計算に絞ってその体系を明らかにし,建設的な議論の基礎を提供したい.なお,それぞれの原価計算観に基づいて志向性を有する各原価計算は,どのタイプが絶対的に優れているかというわけではないことを,あらかじめ指摘しておく.原価計算に対する実施者の期待によって,適切なタイプは異なるからである.
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