連載 医療管理会計学入門・12【最終回】
病院原価計算の現状・課題と共通原価計算制度の必要性
荒井 耕
1
1一橋大学大学院商学研究科
pp.230-233
発行日 2013年3月1日
Published Date 2013/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102481
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■サービス別原価計算の現状
2000年代後半のDPC別包括払い制の本格化(適用病院の拡大)に伴い,DPC別原価計算を中心に,サービス別原価計算が一部の先駆的な病院で普及し始めている.2009年5月に全DPC対象病院(2008年度)に対して実施した調査1)では,DPC別原価計算が12.0%の病院で実施されており,患者別(8.0%)や行為別(6.7%)の原価計算もわずかであるが見られた.また,DPC別や患者別には,病床規模による違いがある程度有意に観察され,大病院のほうが実施率が高い.さらに,規模の影響を避けるために規模を統制して公私間を比較したところ,患者別では統計的に有意に,DPC別では十分な有意性まではないものの,私的病院のほうが実施率が高かった.部門別原価計算と同様に,DPC別・患者別原価計算も,大規模病院や私的病院での導入率が高いのである.
同様に,規模を統制してDPC適用開始年度の早い(DPC経験が豊富な)病院と遅い(DPC経験の浅い)病院を比較すると,DPC別原価計算に関しては,十分な有意性はないものの,適用が早かった病院のほうが実施率が高い.さらに,ある公的病院グループを対象に実施した調査研究1)では,DPC対象病院とDPC準備病院という,DPC経験度の極めて異なる病院群間で比較すると,DPC別原価計算だけでなく,患者別や行為別の実施率もDPC経験豊富な病院のほうが有意に高い.DPC適用開始の時期とその後の経験が,DPC別原価計算などの導入に影響を与えていることが明確になった.
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