特集 想定外を想定せよ—病院BCPのバージョンアップ
分野別病院BCP
病院建築におけるBCP—地震,水害
小林 健一
1
1国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部
キーワード:
病院建築
,
地震災害
,
水害
Keyword:
病院建築
,
地震災害
,
水害
pp.777-780
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211759
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
■はじめに
われわれの暮らす日本列島は,地球を覆っている地殻の北米プレート,ユーラシアプレート,太平洋プレート,フィリピン海プレートの4つが衝突するところであり,そこで発生するエネルギーにより世界有数の地震大国となっている.さらにプレートの沈み込みは,地震だけでなく活発な火山活動を誘発している.
また日本列島はそのほとんどが山地であり,国土面積に占める可住地割合は3割弱で諸外国と比較して著しく小さく,急傾斜地においても宅地開発が進められている.この急峻な国土を流れる河川は,諸外国と比べて短く急勾配であり,激しい降雨の際には一気に流れて急激に水位上昇し,雨量が多い場合にはしばしば洪水となる.このためわが国では江戸時代以前より,利根川・荒川・木曽川・淀川などの大河川において瀬替え(人手による川の付け替え工事)が行われ,人びとの暮らしを守る営みが繰り返されてきた.
このようにわが国は,地震災害や水害が繰り返し発生する世界でも稀な「災害大国」であるが,これは国土の地理的特性なので,将来的にも変わらないであろう.しかし,過去の災害で得られた教訓を整理し伝えることで,今後の対策・対応に生かすことはできるのではないか.
本稿では,過去の地震災害・水害による病院被害調査の結果から,病院ではどのような被害が生じたのか,どのような対策が有効なのか,について建築設備の視点を中心に述べる.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.