特集 医療費の配分を問う
子孫に誇れる医療を―将来世代の借金で医療を賄うことの愚かさ
坂野 嘉郎
1
,
近藤 正晃ジェームス
1
1特定非営利活動法人 日本医療政策機構
キーワード:
世代間
,
医療費
,
格差
,
高齢化
,
相続税
Keyword:
世代間
,
医療費
,
格差
,
高齢化
,
相続税
pp.827-831
発行日 2009年10月1日
Published Date 2009/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101550
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■議論されない負担の先送り
将来世代の借金を積み増すことで,現在世代の医療を負担していく.このような無責任な政策が,日本の医療では20年近く続けられている.かつての日本人は,子孫によりよい社会を残すことを当然の責務として捉えてきた.仮によりよい社会を残せないとしても,せめて借金を残さない.そうした当たり前の道徳観が,現在の医療からは欠落している.
医療の「世代間配分」を議論する時,通常は,高齢者により多く給付すべきか,子どもにより多く給付すべきかといった,現在の医療給付の配分が問題となる.医療資源が限られている以上,その給付をいかに配分すべきかは重要な論点である.しかし,本稿で取り上げたいのは,この給付の世代間配分ではない.あまり議論されることがない,負担の世代間配分,その中でも将来世代への負担の先送り問題に国民の注意を喚起したい.この負担の先送り問題こそ,日本の医療の最大の改革の先送り問題である.
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