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■slip-lessからfilm-less,そしてpaper-lessへ
1980年代末から1990年代前半にかけてパソコンの使用が一般化し,パソコンを利用した情報化が産業界で“加速度”的に広まった.病院の場合も例外ではなく,会計と保険請求の分野で情報化がなされた.その後,1994年マイクロソフト社のウィンドウズ出現で使用環境が革新的に改善し,インターネットがポピュラーとなり,ネットワークの概念が新たに成立した.このようなITの発展を通し,サービス産業の情報化プロセスにさらなる拍車がかかった.病院においては,会計と医療保険分野の情報化によって処方箋の情報化が進み,病院の処方箋を無くす,すなわち「slip-less」の時代が始まった.
それから,本格的な病院情報システム(Hospital Information System, HIS)の時代が到来した.その中で,政府は1999年11月に,放射線検査画像フィルムのデジタル化へのインセンティブとなるエポックメーキングな政策誘導を実施した.それはFULL PACS(医用画像管理システム,Picture Achieving and Communication System)の保険点数請求の承認である.病院のフィルムシステムを“全て”PACSに変えた場合,フィルムの場合よりも保険点数が高く設定され,病院のPACS化へのインセンティブとなった.これにより大部分の病院でPACS導入が加速化し,「slip-less」に引き続き「film-less」の時代に進展した.PACSの導入は病院情報システムにとって「slip-less」と並ぶ重要な柱となり,情報化による利便性と有効性について,経営者はもちろん現場の医療従事者も切実に認識するきっかけともなった.
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