連載 病院管理フォーラム
■医事法・20【最終回】
医療裁判から医療ADRへ(2)
植木 哲
1
1千葉大学法経学部法学科
pp.1095-1098
発行日 2008年12月1日
Published Date 2008/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101351
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
●医事訴訟の限界と裁判外紛争処理医事訴訟の増加と対策
本連載第17,18回(本誌2008年9,10月号)で示した医事訴訟の現状,およびTKC(医療判例検索データベース)による判例登録状況からもわかるように,今日,医事訴訟が頻発しています.このような現状をどう判断するかは自由ですが,これを正面から受け止め,合理的な対策を立てないかぎり,法律学の観点からも医療をめぐる将来は暗いと言えます.医事訴訟の面から見ても,医療は確実に崩壊の方向に向かっている(小松秀樹『医療崩壊』,2006)というのが,私の実感です.
これに対する医師・医療側からの反応は,古い医師・医療界の常識(パターナリズム)に基づいた対応と言わざるをえません.これによれば,今日の医事訴訟の増加傾向は徹底して悪(悪しき状態)であり,結果として萎縮診療(防衛医療)を助長するだけのものと評価されます.「アメリカの悪弊を日本が後追いしている」と言って眉をしかめる向きもありましょう.しかし,このような専門家集団の因習に囚われた反応は,今日,多様な価値観の下では逆に反発を招くことが必至です.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.