連載 続クロストーク医療裁判・9
薬物アレルギーの既往を有する患者に対する抗生剤投与後の対応―抗生剤投与後ショック発症死亡事件―最高裁平成16年9月7日の判決から
渡邉 隆浩
1
,
大澤 彩
2
,
小川 陽子
3
1東京地方裁判所
2法政大学法学部
3東京大学大学院医学系研究科
pp.826-831
発行日 2008年9月1日
Published Date 2008/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101286
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本連載は65巻3号~66巻2月号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.
第9,10回では,異なる論点の注射関係の判決をとりあげる.第9回は,S状結腸がん除去手術を受けた患者が,感染予防のため静脈注射により抗生剤(ペントシリン,ミノマイシン)の投与を受けた後に,アナフィラキシーショックに陥って死亡したケースにおいて,抗生剤投与後の経過観察義務,救急処置態勢の準備義務の有無が争われた事案である.本判決は,投与された抗生剤の能書き,問診において患者からアレルギー体質の申告があったことなどを予見可能性の根拠として,医師に,アナフィラキシーショックの発症に備えた措置(担当の看護婦に対する投与後の経過観察等の指示,発症後の救急処置を採り得る態勢に関する指示等)を怠った過失を認めており,上記注意義務の有無のほか,薬物投与の過失と能書きの関係,問診の在り方等も論点となり得るものである.
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