視座
手術のasepsisと予防的抗生剤投与
田島 達也
1
1新潟大学整形外科
pp.1073
発行日 1976年12月25日
Published Date 1976/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905439
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我々外科系医師にとつて術後の感染防止は最大の関心事の一つである.それにはasepsisが最重要事項で,それに予防的抗生剤投与も重要な問題点といえる.これらの問題について私共は半ば習慣的に一定の方法を行つているがその根拠を問いつめられると答えに窮する点もあり,「所変れば品変る」という諺のように国,病院あるいは科によつても随分異る方法が行われているようである.そこで時々我々自身が行つている方法も反省してみる必要があろう.
特に整形外科では関節全置換術の普及に伴いbioclean roomの必要性が強調されている.実はこれについては我々以上に関心をもつべき人工弁置換を行う心臓外科医がサッパリ関心を示さないことや,欧米の整形外科でも「経済的理由」からばかりでなく,その意義に対する疑問もあつてその普及率は必ずしも高いとはいえない.しかしその効果を肯定するとしてもその他の点においてこの"ultra-asepsis"に匹敵する厳重なasepsisを実行しなければ「最小利用の法則」が働いてその真価は発揮できないはずである.英国でかつて強調された"non-touch法"が有効かつ実際的asepsis法といえるかは別としてわが国で,手術野の皮膚のasepsisは術者の「手洗い」と同程度の厳重さで行われているだろうか? ところで皮膚の剃毛については米国では日本ほど神経質には考えていないようである.
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