連載 鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・10
5月と10月 午前11時と午後の2時…―もう1つの「生きる」を見つめる
鉄郎
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1「おおぞら」いぞく塾
pp.654-655
発行日 2008年7月1日
Published Date 2008/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101247
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忘れないでください
10年ほど前になるが,Mさん(卵巣がん末期)の隣のベッドに,言葉の不自由な患者さん(以下,Qさん)がいた.何かの病気の時に声帯を摘出し,食事はのどにぽっかりとあいた穴からチューブで流し入れる.コミュニケーションの手段は筆談のみ.
しかしそれでは,医師や看護師との意思疎通がうまくいかない.そのいらだちがストレスとなって食欲は減退,体重も減り,病状も悪化する.悪循環だ.妻のベッドからカーテン越しに泣いている姿が映る.Mさんをはじめ,同室の患者さんたちは,なにか自分たちにできることはないかと考えた.言いたいことがもう少し伝われば楽になれる.思いついたのが「あいうえお」の50音表「文字盤」の作成だ.
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