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現在,世界中で健康格差が進行し,以前にも増して健康に生きるための個人の能力が重要になってきています.健康格差への戦略として“The ability to access, understand, and use information for health”(Nutbeam D, 1998)と定義されるヘルスリテラシーが注目され,日本よりも健康格差が深刻な米国では,健康政策指標である「Healthy People 2010」でも,国民のヘルスリテラシー向上が国家目標に掲げられました.
2010年秋,幸運にもロンドンの郊外にあるサウサンプトン大学へ,ヘルスリテラシー研究の第一人者ナットビーム教授を直接お訪ねし,インタビューすることができました.ナットビーム教授は,ヘルスリテラシーは「単に個人を健康にするだけでなく,組織,地域や社会を健康にする力がある」とおっしゃっています.つまり,ヘルスリテラシーが高い人は,もちろん禁煙したり,運動をはじめたり,食事に気をつかったりしますが,それだけでなく,仲間を誘ってサークル活動を始めたり,周囲の人にも禁煙を勧めてくれるかもしれません.社内にヘルスリテラシーが高い人が増えると,自然と口コミで正しい健康情報が広まり,会社全体が健康になるということが期待できます.つまりヘルスリテラシーを単なるリスクファクターとしてでなく資産(アセット)として捉える考え方で,非常に共感できるものでした.約1時間,臨床と公衆衛生,米国と欧州での捉えられ方の違い,知識(ナレッジ)とリテラシーの差など多くのことを議論でき,自分にとって大変貴重な時間となりました.ナットビーム教授に日本の企業での職域ヘルスプロモーションの取り組みを紹介したところ,「それは間違いなくヘルスリテラシーを高める取り組みだよ」とおっしゃって頂きました.
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