連載 医療動向フォーラム
■DPCの今後を予測する・8【最終回】
DPCを軸とした今後の医療制度改革の展望
高橋 泰
1
1国際医療福祉大学医療経営管理学科
pp.268-269
発行日 2008年3月1日
Published Date 2008/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101150
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●医療の標準化・透明化とDPC
日本の医療機関が月末に作成するレセプトは,世界に類を見ない詳細な診療内容を示すデータといえる.しかしこれまでは,その内容が紙に印刷されたもので電子化されていないため,この貴重なデータを経営や管理に利用することが難しかった.筆者はDPCの理論面での生みの親といえる産業医科大学の松田晋哉先生と,DPCプロジェクトの本質は何かというディスカッションをしたことがある.この時,松田先生は「DPCプロジェクトの本質は,レセプト電算化」と答えられた.この言葉を少し噛み砕いて説明するならば,DPC導入により詳細な診療内容を示すデータを電子化し,この情報を地域医療や各医療機関の経営や管理に利用可能にすることにより,日本の急性期医療の質を上げることが,DPCを導入する最重要目的であるということである.
このような流れを受け,各病院が提出したDPCデータを集計して,種々の病院を比較したデータが病院の実名入りで公表されるようになってきた.例えば白内障(両眼)の手術目的の入院では,短い医療機関では4日前後であるが,長い医療機関では10日を超えていることを多くの人が知るようになってきた.またDPCデータを用いれば,治療内容の病院間のばらつきも明らかになる.図は,白内障の手術目的で入院した患者への抗生剤投与額(円)の平均値の病院間比較を表す.このようなデータが地域ごとに病院の実名入りで公表されるようになると,白内障の手術を受ける人の多くはこのような情報を参照し,「A病院は,術後に抗生剤の投与を行わない病院」と考え,A病院を敬遠するようになるだろう.
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