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事務長日記
檜原 謙
pp.94-96
発行日 1963年10月1日
Published Date 1963/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202225
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8月1日(木)
今日はとても疲れた。増収対策を検討する臨時経済委員会が終わったのは22時。それから帰ったので,いまはもう24時に近い。委員会が開かれたのが16時だったから,ぶっ通し6時間の会議だったわけだ。院長や顧問のO先生も同席。とくに院長は,大学の時は医学と教育のことさえしておればよかったのに,病院へ来て見ると,こんなふところ勘定の心配までしなければならないというわけで,さぞびっくりされたことと思う。
今年の収支予想は,いまのところどうやらとんとんの線までは持って行けそうだが,例年どおり人事院の給与改訂の勧告が出てベースアップがあると,約1千万円の赤字はどうしても免れない。そうなると,毎年出して来た決算賞与はもちろんなくなるし,その上,新しい機械設備の購入はおろか,そろそろ取りかえる必要の出てきたものの更改さえもできないことになる。それが職員の士気にも影響し,また病院機能の全般的低下を来たすことは明かだ。その結果,病院収益は減少せざるを得ないだろう。こうして,病院経営上最も警戒すべき悪循環がはじまることになる。この悪循環に陥ることは何としても防ぎとめなければならない。セネカも,「財布が空を告げた後の経済はすでに遅い」と言っている
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