特集 価格とコストの地域格差
診療報酬と地域差
田中 滋
1
1慶應義塾大学大学院経営管理研究科
pp.731-734
発行日 2007年9月1日
Published Date 2007/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101009
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「都会における医療機関経営は,最大費用項目である人件費をはじめ,食材費等のコストが地方より高いので採算が厳しい」「地価の水準のために土地購入費が地方をはるかに上回る金額にのぼり,資金調達の一部を借入金に頼った場合,同一の面積を手当てした同じような売り上げ規模の地方の病院・診療所に比べ,(土地については減価償却によるキャッシュフローが発生しない以上)より大きな額の利益を毎期獲得できなければ借入金元本の返済ができず,経営の存続が困難となる」「借りている土地や建物の地代・借料も高い」等の声がこの特集の背景であろう.
これらの主張は,「ゆえに公的医療保険からの診療報酬について,地方を上回る一点単価もしくは点数を設定してほしい」との期待ないし希望につながる場合も珍しくない.実際にそのような希望をもつ経営者がおられることは承知している.また,今でも診療報酬には例外的な地域加算が存在し,また介護報酬1単位あたりの金額にわずかな価格差が存在している点は周知の通りである.
ただし,そうした願望をもつことは都市部の医療機関経営者にとってやむをえぬと十分に理解できるものの,以下の各項に示す内容を打ち破る論拠を示さない限り,社会連帯,すなわち共助の仕組みである医療保険制度から支払われる診療報酬への大掛かりな地域格差導入は難しいと考える.
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