特集 価格とコストの地域格差
賃金と物価の地域間格差
石川 達哉
1
1ニッセイ基礎研究所経済調査部門
pp.726-730
発行日 2007年9月1日
Published Date 2007/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101008
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本年1月と6月にそれぞれ閣議決定された政府の「進路と戦略」および「骨太の方針」においては,景気回復の地域間不均衡に対する懸念が表明される一方,地方自治体の財政力格差を縮小させるべく地方財政制度や税制の改革を進めることが明記されるなど,地域という集合体としてのレベルでも衡平を追求する考え方が社会の趨勢となりつつある.ただし,景気回復の度合いや自治体の財政力以外の面で問題とすべき地域間格差が存在するのか,それらの格差がどの程度の大きさのものか,過去と比べて格差が本当に拡大しているのかどうか,などが顧みられることは意外に少ない.
地域社会を構成する1人ひとりの個人にとっての地域とは,生活者として消費する場であり,また,労働者として生産活動に従事する場であろう.したがって,地域社会における個人を集合体として捉えた場合でも,生活水準を決める最も重要な要因が当該地域における所得と物価であることは,一個人の場合と基本的に変わらないはずである.ところが,このように重要性の高い所得・賃金と物価について,地域による差異の実態がデータに即して語られることは極めて稀である.そこで,都道府県および県庁所在市の賃金と物価に関する様々な統計に基づいて,地域間の格差が本当に拡大していると言えるのか否か,格差拡大はどのような時間軸,どのような品目において観察されるのかなどの観点から,以下で検討を行うこととしたい.
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