特集 変革を迫られる大学病院
始動する新臨床研修制度と今後の大学病院
前野 哲博
1
1筑波大学附属病院卒後臨床研修部
pp.726-730
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100675
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卒後臨床研修必修化の概要
1.新医師臨床研修制度
平成12年に医療法等の一部が改正され,これまでの努力規定に代わって平成16年度より卒後臨床研修が必修化される.法律で規定されている内容のポイントについては表1に示す通りである.当初は研修修了後に保険医の資格を与える案が検討されていたが,最終的には,臨床研修による制限事項は医療機関の開設者になる場合のみとなった.
したがって,医学部卒業後に基礎医学研究者になるなどの理由で全く臨床に携わらない場合や,将来にわたって勤務医でしか仕事をしない場合は定められた臨床研修を受ける必要はないという解釈も成り立つ.しかし,同級生の多くが研修を受け,修了認定を受けて医籍に登録されていく中であえて研修を受けないことは,将来的に就職や専門医の取得などにおいて圧倒的に不利になる可能性もあることなどから,実際にはほとんどの卒業生が研修を受ける見通しである.
今回の改正のもう一つの柱は,研修への専念義務である.これにより,生活費を得ることを目的としたアルバイトはできなくなると同時に,研修病院側にも研修医が研修に専念できるような給与の保証が求められることになった.したがって,現在一部の病院(主に大学病院)で行われているような,月額数万円という処遇は認められないことになる.なお,研修医の位置づけについては,学修性と労働性の二つの側面をもつことが明記され,各種労働法規の適用を受けることになった.
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