特別寄稿
研修医を適正な目標と判断力を持った職業人に育てるには―洛和会音羽病院における入職時研修プログラム
角田 誠
1
1洛和会音羽病院総合診療科
pp.136-140
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100562
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初期臨床研修に関しては学会や研究会などで多くの討議がなされ,スーパーローテーションを理想的な形式とする認識が定着しつつある.ローテーション教育は,広い知識と技能を短期間に効率的に修得することを可能にする極めて優れた教育手法といえる.しかし反面,失うものも多い.例えば,短期間で次の診療科へと移っていくため,指導医や患者様との関係が希薄になりやすいといった問題点もある.ローテーションは卒前教育をしっかり行えば本来必要なく,ストレート方式のほうがずっと充実感があるとする意見も根強いのである.ストレート方式は,半年から場合によっては年余にわたる長い期間を同じ指導医と診療を共にする,いわば「徒弟制度」である.そこで培われてきた道徳教育や手間のかかる学会発表の指導などは,ローテーション教育の普及により,むしろ不十分になったことは事実であろう.
当院でも教育の機会を増やそうと全診療科長が協力して,早朝や夜間に講義,演習,討議を行っていたが,当然ながら初期臨床研修医(以下,研修医)には担当している患者様の診療を最優先とするよう教育しているため,出席率は必ずしも良好とは言えなかった.出席を強制すれば,二つのスケジュールで同時に縛ることになるので,その状況におかれた研修医の苦しみは想像に難くない.
幸い筆者は卒後12年目の年からシニアレジデントも含めた研修全般の世話係を担当してきたので,彼らと年齢が近い.そこで研修医と対話しながら,ローテーション教育を円滑に行い,研修医の満足感を得るためにはどうすべきかを模索してきた.本稿においては,その中で得た臨床研修を実施する上での課題などについて述べてみたい.
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