連載 病院管理フォーラム
■虐待防止・1
医療の中に虐待防止の視点を
加藤 雅江
1
1杏林大学医学部附属病院医療福祉相談室
pp.436-437
発行日 2007年5月1日
Published Date 2007/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100511
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医療機関で出会う児童虐待の質が変化している.十年近く前,私たちが杏林学園の中に児童虐待防止委員会を立ち上げた頃には,身体虐待の症例が多かった.救急外来に運ばれる子どもの,説明のつかない怪我に一体何が起きたのだろうかと医学的な見地から真実を探ろうとしていた.地域の関係機関と連絡を取り,生活史や社会的な背景を知ることで,家族が抱える苦しみを理解しようとしていた.
社会的な背景がより複雑になったからだろうか,人間関係やコミュニケーションに由来するストレスが増大したからだろうか,虐待の根はより深いものとなり,家族の心理は援助する側の理解が追いつかない程,複雑になっていっているような気がする.昨今,マスコミに取り上げられる事例にも同様の兆候がうかがえるように思う.つまり,虐待を疑い援助を展開しようとしても従来の方法・対応では不十分であったり,不適切であったりということが現場では日常的に起こり,援助する側は常に悩まされている.
一方で,このような現場での戸惑いを解決できるような法の整備も十分行われておらず,このような援助が本当によかったのだろうかと日々,振り返り限界を感じている.このような状況の中でも,虐待を受けた子どもたちは医療機関に運ばれてくる.今ある現状の中で何ができるのか,考える一助になればと思う.
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