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ホスピス・緩和ケア病棟では,患者さんとあわせて家族もケアの対象者と捉えている.終末期の場面において,これまで「家族」が紡いできた歴史は集大成を迎え,また患者さんとの別れによって新たな生活を始めることになる.とりわけ夫婦の場合,残された配偶者は喪の仕事(葬儀や法事など宗教的なセレモニーや遺族に引き継がれた諸問題の解決等),家庭内力動の変化,亡くなった配偶者の原家族との関係等について,強い不安や戸惑いを示すことがある.本事例は,リエゾン・コンサルテーションを活用しケースワークの技法を用いて家族関係の再構成を試みたものである.
ホスピス(hospice)という言葉は,“旅に疲れた人をもてなす宿” の意味を持つラテン語から生まれた.その言葉に由来しているように,ホスピス・緩和ケア(palliative care)は,治癒不可能な状態にある患者さんおよびご家族のクオリティー・オブ・ライフ(QOL)の向上のために,様々な専門家が協力して作ったチームによって行われるケアを意味する.そのケアは,患者さんとご家族が可能な限り人間らしく,“その人らしく” 快適な生活を送れるように提供される.
近代的なホスピスとして最初に設立されたセントクリストファー・ホスピス(イギリス)のシシリー・ソンダース博士(1918-2005)は,「死に直面した人々のケアにおいて,患者の苦痛の全体像に直面したとき,身体的痛みだけでなく,心の痛み (Mental pain),社会的な痛み (Social pain),霊的な痛み (Spiritual pain) について検討が必要である」と述べている.また,博士は医師になる前,ソーシャルワーカーとして働いていたことも知られている.
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