- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
モチベーションとは何か
1.モチベーション理論が扱うこと
モチベーション(motivation)という言葉は,日常的にも時折耳にするようになりました.例えば,「こんなことばかりさせられていたらモチベーション下がるよね」とか,「ちょっとモチベーション上げないと結果が出ないよ」といった使い方です.元々は心理学で発展してきたこの用語は,人の意欲ややる気を指しています.どのようなメカニズムで人は意欲を持つのだろうか,あるいは何があれば人は意欲を高めるのだろうかといったことを扱うモチベーション理論は,動機づけ理論とも呼ばれており,「行為が生起する心理的メカニズムと条件を明らかにすること」が目的とされています1).前者のようにメカニズムを明らかにする考え方は,意欲を持つようになる過程の解明を目指すもので,モチベーション理論の中でも過程説と呼ばれています.また,後者のように意欲を持つための条件や中身を明らかにしようとする考え方は内容説と呼ばれています.
メカニズムや条件を明らかにするには,多方面からのアプローチが必要です.学者によってアプローチは異なり,モチベーションの詳細な定義も様々ですが,共通する関心事が3つあると言われています2).それらは,何が人間の行動を元気づけるのか(エネルギー),何がそのような行動を方向づけているのか(方向づけ),どのようにその行動は維持されているのだろうか(維持)です.
何かがトリガーとなって人の行動が生起し,ある方向に向かい,そのエネルギーが維持される.その全体像の解明がモチベーション理論で期待されていることで,心理学では実験室での実験研究や現場での介入研究が数多く行われてきました.経営学では,モチベーションは仕事意欲と同義であり,働く人のやる気や仕事意欲の解明のために研究がなされています.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.