連載 今,なぜ医療経営学を学ぶのか 基本からわかる医療経営学・5
医療における組織倫理
勝原 裕美子
1
1兵庫県立大学看護学部
pp.842-845
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100397
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■組織倫理とは何か
1.医療にまつわる倫理
医療の中で倫理を考える視点は既にいくつかあります.一つは生命倫理の視点です.医療の高度化や科学技術の進歩に伴い,それまでは神や運命が決めていた人の生死の問題,すなわち生まれるべきか死ぬべきか,いつ生まれるのかいつ死ぬのかといったことが人間の判断と操作でできるようになりました.代表的なものには,延命措置,臓器移植,不妊治療,遺伝子操作などがあります.もう一つは,臨床倫理の視点です.臨床の現場で患者・家族を目前にして日々生じている臨床倫理の問題には,行動制限(抑制)をどのタイミングでするのか,患者への病気や予後の告知を家族がしてほしくないという場合に,どう対応すべきなのかといったことがあります.
ところが,医療組織の中には,生命倫理や臨床倫理の視点だけでは説明しきれない倫理問題があります.それが三つめの倫理的視点で,本稿で扱う組織倫理です.組織倫理は医療組織だけでなく,組織体であればどこにでも生じるような問題です.例えば,書類の改ざん,セクシャルハラスメントやパワーハラスメント,利益供与,不祥事の隠滅,イジメなどがこれにあたります.組織倫理の問題とは,組織の文化や組織の仕組みが引き起こす問題なのです.
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