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■医療ソーシャルワーク業務の数量化の発想
相談援助の傍ら,業務の数量化とデータ分析を試みて 4 年が経過した.「必要で十分な時間を確保した相談援助業務を行う」「医療ソーシャルワークの業務を的確に伝える」という使命感が今回の研究のきっかけである.個々のケースを通して私たちの仕事を伝えることも可能であり必要ではあるが,様々な側面で効率性が追求される医療政策や医療情勢の中では,個別ケースのアセスメントだけではなく,これらのケース全体を俯瞰し,数量化した評価が求められていると言える.このためには日頃の相談業務を従来とは異なった手法で明らかにすることが必要である.つまり,相談業務の客観的な指標の提示が必要な時期を迎えているのである.
■全退院患者の状況の把握が MSW マーケティングの第一歩
図 1 は当院一般病棟から退院した患者の在院日数である.全退院患者数は 6,729 人であり,月平均 561 人が退院している.平均在院日数はこのデータからでは 15.7 日だが,驚いたことに最多の在院日数は 3 日で全体の 15.4 %も占めている.この対象となっているのは狭心症や心筋梗塞などの心臓カテーテル検査,脊柱側弯症や脊柱管狭窄症,頸髄症などの脊髄腔造影,大腸ポリープに対する大腸ファイバー,尿路結石や腎結石への体外衝撃波腎・尿路結石破砕術,前立腺癌への前立腺針生検が主だった疾患と検査を含む治療内容であった.基本的にはこれらの患者への退院支援を MSW が行うことはなく,直接的な退院支援の対象にはならない.他方,6 か月以上の長期入院患者も僅かに存在し,そのほとんどは MSW への相談依頼がある.重要なことは個々のケースの在院日数を平均在院日数に近づけることではない.退院支援においては長期入院患者やその可能性がある患者を把握し予測することである.このように退院患者の全体の状況を把握することは,MSW が関与する患者層や守備範囲を検討することを可能とする.
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