Japanese
English
特集 世界の精神科医療の動向
イギリスの精神科医療
Psychiatric Health Services in England
北村 俊則
1
,
池上 直己
1
Toshinori Kitamura
1
,
Naoki Ikegami
1
1国立精神・神経センター精神保健研究所
1National Institute of Mental Health
pp.985-991
発行日 1988年9月15日
Published Date 1988/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204580
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I.はじめに
諸外国の精神科医療を論ずる場合には,まず対象国の社会文化的背景を概観し,ついで医療システムの枠組を理解しなければならない。そこで,はじめに前者についてイギリスは日本と著しく異なる点が二つあることを指摘する必要があろう。その第1は階級制度,第2は人種問題で,いずれも90%以上が中流意識をもつ「単一民族国家」とは正に対照的である1)。
イギリスの階級制度は厳然と存在し,各種世論調査でも国民の所属階級意識は中産階級と労働者階級にほぼ二分されている。社会を規定するうえで,この両者の相違のほうが,少数の上流階級の存在よりはるかに重要な要素である。階級は職業によって決まるが,逆に職業によって国民に対照的な2つの生活パターンがある。中産階級には個人的な立身出世,労働者階級には集団としての生活権の保障が基本にあるといえよう。こうした生活信条の相違が,話し方を含めた衣食住のあらゆる面において国民を分断している。
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