特集 超高齢社会の終末期ケア
終末期ケアの法的ルール
井田 良
1
1慶應義塾大学大学院法務研究科
pp.110-114
発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100162
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終末期ケアの法的問題
医学の進歩とともに,死は否応もなく「人為的操作」の可能な現象となった.患者への積極的治療を継続することにより死期をかなり先に延ばすこともでき,逆に,治療のレベルを落とすことは早期の死を招来する.とはいえ,医療従事者に対し,常に最大限の積極的治療を最後の瞬間まで継続することを強いることはできない.とうに患者が意識を失ってしまい,意識が戻る可能性もないという状態でも,とにかく極限まで心臓と脳を人為的に機能させ続けること(いわば生命体として生き長らえさせること)を法が義務づけるとすれば,それは非人間的であり,野蛮なことである.医師がどこかで積極的治療から「撤退」することにより患者に自然な死を迎えさせることは違法ではあり得ない.
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