特集 超高齢社会の終末期ケア
病院としての終末期ケアへの対応
池上 直己
1
1慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
pp.102-109
発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100161
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日本における年間の死亡者数は2002年には100万人を超え,その8割が病院で亡くなっていることから1),死亡退院は退院患者総計1,400万人の6%を構成していることになる2).死亡者数は高齢化の進展に伴ってさらに増加し,2038年にはピークの170万人に達すると予測されており3),病院で死亡する割合および退院患者総数がともに変わらないと仮定すれば,退院患者10人のうち1人は死亡退院となる.
今後,在宅や介護保険施設での死亡割合が多少高まることがあったとしても,病院にとって病院で亡くなる患者とその家族に対して適切な終末期ケアを提供することは,超高齢社会においていっそう大きな課題となる.ところが,現状では「終末期ケア」は,がん患者に対して緩和ケア病棟等の特別な療養環境下において提供されるケアとして一般に認識されており,医療従事者のほとんどは死の看取りについて体系的に学んでいない.そのため個々の医師と看護師の対応に任されている要素が大きく,その結果,医療サービスの質にばらつきがあるだけではなく,病院のリスク管理上も問題であり,さらに患者の受けたケアに遺族が不満を持っていれば病院の評判は低下して経営にも影響することになる.
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