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東大病院の病棟の系譜
東大病院にはかつて特徴のある病棟が多く存在した.赤レンガの産科・精神科病棟,結核病棟の東第1病棟,小児科の東第2病棟,外科病棟,中央病棟,そして北病棟(当時としては画期的な1看護単位40床のダブルコリドーの平面構成)など,当時の病院建築計画において常に新しいテーマを提供し,病院建築をリードしてきた(図1).
今回本稿では第4期計画の新病棟:入院棟 A の設計に際して,入院棟 B(北病棟)と外科病棟について調査している.それぞれにテーマがあり,その系譜をたどる.外科病棟は旧中央診療の4階から7階の病棟で中央診療棟に直結した外科系の病棟であり,中廊下型でリカバリーと総室的な病室にその特徴がある(写真1).
当時の外科系病棟では重症患者,術後の患者を含め,各病棟で集中観察する必要があった.そのためにスタッフステーションに直結したリカバリーが必要であった.外壁面は床までガラス張りで,明るく外の緑が望めスタッフの緊張感を和らげる効果がある.このことは入院棟 A・4階 ICU の窓廻りのデザインに継承されている(写真2).また,ベッド配置において脳外科病棟のリカバリーでは患者の頭側を廊下に向けてベッドをレイアウトしていた.看護するうえで頭部からのアプローチの重要性を認識し,入院棟 A・4階 ICU ・ CCU においても同様に患者頭部側の通路を確保した.
総室に関しては4床ごとに上下がオープンなパーティションで区切られ,全体で24床の大きなワンルームの空間となっている.廊下中央に立つと24人の患者の様子がなんとなくわかる.今日,廊下との安全区画や患者のプライバシー確保などの理由により,このような設計は困難であるが,ナイチンゲール病棟のイメージにつながる,おおらかな空間構成はとても魅力的であった(写真3).
北病棟は現在入院棟 B として主に内科系病棟として稼働している.病室は個室と5床の組み合わせである.ダブルコリドーの平面タイプは看護動線が短く,この点に関しては評価が高い.当時は6床室と個室からなる1フロア40床の病棟である(図2).
50床以上が一般的であった当時,1看護単位を40床にする先進的な計画は看護運営上,夜勤体制のシステムなどと絡んで議論を呼んだ.今でこそ重症病棟では40床は珍しくはないが,センセーショナルな計画であったといえる.
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