連載 リレーエッセイ 医療の現場から
共に考え,共に歩む
岡崎 渉
pp.597
発行日 2005年7月1日
Published Date 2005/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100051
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「どうも色々とお世話になりました.おかげでさまで良くなりました」と笑顔で作業療法を卒業される患者さんを見送ることは,とてもうれしいものである.ただ,その 〔おかげさま〕 というのは,患者さんが 〔自分のおかげ〕 ということも多分にあるということに気づく方は意外と少ないのではないだろうか.状態が良くなったのは,つらい時期を経ながらも,患者さんがもともと持っている自分の力で良くなった部分がとても大きいのではないかと思う.もちろん医師や看護師,その他のスタッフの果たす役割を抜きに考えることはできないのではあるが.
私は総合病院に勤務する精神科の作業療法士であり,主にうつ病,そううつ病の患者さんを対象とするリハビリテーションに携わっている.患者さんの生活の再構築を支えていくのが作業療法士としての役割であるのだが,患者さんに世話を焼き過ぎるようなことがあれば,それはスタッフの自己満足にしか過ぎない.患者さんが自分で考えたり,自分でできることまでスタッフが手伝うとすれば,それは患者さんの自立する力を奪い取っているといえる.患者さんの自立に向けた援助を行う際,リハビリテーションは場合によっては厳しい場になることもある.そのような時も患者さんのそばにいて,ともに考え,ともに歩みながら,患者さんが行く方向を誤らないように,より良い方向に進めるよう良いコーチでありたいと思う.
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