- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
幼少脳性まひ児の治療は,異常な姿勢反射の抑制と治療的パターンの促進や,より高度な姿勢反射の開発を基礎として,正常児における発育段階を追った方法が一般的にとられている.
通常正常児の運動発達はneck controlの確立から始まり,寝返り,四つ這い,膝立ちから起立歩行へと進む.しかしながら脳性まひ児の運動は原始的パターンの抑制が不十分なことが多く,立位ではprimitive extensor patternによってcrossed legやscissors legを呈し,また不随意運動による股関節の不安定性やwalking baseの狭少をきたし,体性立直り反応による体軸の回旋能力の不十分さ,その他立直り反応や平衡反応の未発達とともに立位保持を不安定なものとし,立脚支持,遊脚振り出しを障害し,起立,歩行能力を低下させ,歩容を障害する.
われわれはこの問題に対し,基礎的マット訓練とともに姿勢反射による自動反応を利用するfacilitation techniqueと,固有受容器および表在受容器刺激によるfacilitation techniqueを利用している.しかし,これらの理学療法テクニックをより有効ならしめるためには,訓練時間以外に装具療法を行なうことが必要である.
従来使用されている外転バー付き長下肢装具や骨盤帯付き長下肢装具などの広範な装具療法には,着脱の困難さ,外転バーの機能的問題,故障の頻発などの欠点がある.また機能面においても正常歩行とのパターンの相違や,生理的な筋トーヌスや治療的パターンの保護に支障をきたすことを経験している.
われわれは最少限のBracingでprimitive extensor patternの枠より,股関節内転筋群の過度の活動を除去した状態を作り,股関節外転位で安定した起立,および歩行を訓練時問以外にも反復練習することにより,内転筋群の過大な緊張を減少させ,外転筋の強化を行なう自的でHip Action Braceを試用してみた.
Hip Action Braceは両側の大腿カフがHinge joint により pelvic band に附着され,股関節にはロッドベアリングを内蔵したover-lapping jointがとりつけてあり股関節屈曲,伸展,外転が自由にできる.またhinge jointにとりつけてあるビスの回転により,必要に応じて内転度を制限することができる(写真1).
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.