今月の主題 消化管ホルモンの基礎と臨床
トピックス
消化管ホルモンのtrophic action
杉山 貢
1
1横浜市大第2外科
pp.2242-2245
発行日 1979年12月10日
Published Date 1979/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216330
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概念
近年,各消化管ホルモンの抽出・合成やラジオイムノアッセイの開発により,消化管の分泌と運動の調節機構における消化管ホルモンの役割が明らかにされつつある,しかし,消化管組織に対するホルモンのtrophicactionや母児相関についての研究は未だ少ない.
初めてこのtrophic actionについて話題になったのは,幽門洞切除(幽切)と迷走神経切断術(迷切)後での残胃粘膜の組織学的変化が指摘され,この変化が術後の消化管ホルモンの変動によるものと思われるようになったことによる.LeesとGrandjeanらは,幽切後の残胃粘膜の生検で23人中22人に進行した粘膜の萎縮像がみられたと報告し,またMelroseらは,迷切後長期間(1〜10年)経過しても胃粘膜の萎縮を認めなかったという.一方では,56例の十二指腸潰瘍症のうち幽切後での萎縮性胃炎の検出頻度は70.4%と術前の18.5%に比べて明らかに多く,しかも壁細胞領域の粘膜の厚さも薄くなっていたという.他方,これとはまったく逆のことは難治性潰瘍・胃酸分泌充進・非β細胞性膵腫瘍を主徴とするZollinger-Ellison症候群にみられる,すなわち,高ガストリン血症に伴う胃および十二指腸粘膜のhypoplasiaと壁細胞数の増加である.
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