あんてな
精神衛生法改正について
計見 一雄
1
1千葉県精神科医療センター
pp.762
発行日 1987年11月15日
Published Date 1987/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103907
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売上税は木っ葉みじんになってしまったが,精神衛生法改め精神保健法は継続審議になったので,いずれ日の目を見ることになるだろう.国会審議の過程で多少の修正と付帯事項が付くとしても,原案はほぼそのまま通ることになりそうだ.
精神保健法を話題とする文章が,判で押したように「宇都宮病院事件」というのを枕ことばにしていることからも知られるように,今回の改正は,本人の意志に基づかない入院に伴う,入院時,入院中の人権侵害の多発を防止することを主な目的としている.患者の自由意志によらない,強制的診療というものの必要が現実的に存在していることを前提としたうえで,その強制を行う際の法的適正手続きを今よりも厳密にしようという考えかたであるから,そもそも強制診療なんて認めないという立場の人や,診療という高度に自由裁量権を認められた行為について法的に縛られることに絶対反対の立場の人からは強い異論,プロテストが提起される.そのあたりの精神科医療にまつわる根本問題が,改正案を作る過程の議論で充分煮つめられたと思えないのだが,と言ってこの種の議論は患者と医者だけにまかせておけば妥当な結論が出るものでもなく,国民の代表の意見に最終的には従わざるをえないだろう.
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