動き
精神衛生法改正の審議
林 暲
1
1神経研究所
pp.623-626
発行日 1964年8月15日
Published Date 1964/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200739
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前々号に記したように,精神衛生法の改正について諮問を受けた精神衛生審議会はとりいそぎ作業を進め,一応明年度の予算編成に関係ある項目のみについて中間答申をとりまとめ,きよう(7月25日)新しい神田厚生大臣に,内村会長から手渡した。これからのち,さらに審議を進め,次の通常国会に新法案を提出するためにはおそくも10月の初めごろまでに条文化の基本的方針,理念をかためなければなるまい。いかにも期間が短かすぎる感があつてまことにつらい。きようの中問答申ではむつかしい問題は先のこととして見送つたことになるが,審議の過程から見ても今後はさらに骨がおれそうで相当の無理は覚悟せねばなるまいと思つている。
前にもいつたことかとも思うが,外部から法改正の問題の起こる動機の一つは,不法入院の事件が起こつたときの人権を中心とした考えかたであり,もう一つは今回のような精神障害者の犯罪を動機とした場合で,いわゆる野放し論である。この両面は互いに矛盾するところがあり,実際にはいずれに片寄つても困るのであるが,今回の場合は国家公安委員長としての国務大臣が引責辞職したような関係もあつて,警察庁当局は社会保安的処置に執心が強く,世論もそうした傾きを示しているので,改正をこのさいわれわれの立場で合理的にすること,すなわち精神障害者をできるだけ正しい医療,保護の流れにのせ,社会復帰までのケアを徹底させることが,自ら社会保安の目的にかない,またこれがそのためにもつとも効果的な方法であることの理解をうることが,短時日では相当むつかしいのがつらいところである。
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