プログレス
アルツハイマー病とアルツハイマー型老年痴呆の新知見
朝長 正徳
1
1東京大学医学部付属脳研究施設
pp.847
発行日 1986年12月15日
Published Date 1986/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103692
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日本は急速に高齢化社会になりつつあり,それに伴い老年期の精神障害,とくに痴呆の問題がクローズアップされてきた.現在,65歳以上の老人の約5%が痴呆の患者である.われわれの剖検例での検索では,このうち60%は脳血管性痴呆(多発梗塞性痴呆ともいう)であり,30%がアルツハイマー型痴呆あるいは両者の混合型で,残りがその他の原因によるものである.一方,欧米ではちょうど日本と逆にアルツハイマー型老年痴呆が60%を占めており,社会的問題となっている.このアルツハイマー型老年痴呆は高齢者ほどその出現頻度が高く,85歳以上では20%におよぶとされ,日本でも今後増加が予想されている.もともとアルツハイマー病とは初老期の疾患でそれほど多いものではなかったが,老人で多い老年痴呆が同じ病気と考えられるようになってからポピュラーな病気になり,米国では死因第4位の疾患とされている.この両者をまとめてアルツハイマー病あるいはアルツハイマー型痴呆(dementia of Alzheimer's type,DAT)と呼ぶようになってきており,老年痴呆をアルツハイマー型老年痴呆(senile dementia of Alzheimer's type,SDAT)と呼ぶことも多い.
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