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Ⅰ.はじめに
近年スポーツ医学に対する関心が高まりつつある.この現象に関連して,国内外において,スポーツ医学に関した学会,研修会の開催,さらに専門誌,専門書の出版物も増えている.
スポーツ(sport(s))の語源はdisportで,遊ぶ,戯れる,楽しませるなどの意味があり,19世紀に主に英国の貴族によって始められたという.その後,社会の民主化,経済,教育の発展に伴い,現在ではスポーツは大衆化し,その人口も大きく増加している.しかしそのため,一方においてはスポーツによる死亡,外傷・障害が増えている.
スポーツによる外傷・障害はそれ以外の場面で起こるものと実質的には同じであるといえようが,幾らかの外傷・障害にはスポーツの種類によって特有なもの,例えば“テニス肘”などがある.また,発生しやすい外傷・障害の予防,トレーニング上の医学的管理の重要性についても認識されつつあり,これらの点からスポーツ医学としての領域の確立は必須といえる.
筆者自身,学生時代には棒高とびの選手で1964年の東京オリンピック出場を夢みて練習に励んでいた間,足,肩関節,腰部捻挫やスパイクなどの外傷・障害を体験したが,その治療,管理については精神主義的忍耐に委ねる傾向があり,現在のような科学的処置や指導を受けることはなかった.そのためか,同僚のなかには半永久的とも言える障害を残し,スポーツを断念せざるをえなかった者もいたが,今思えば残念なことである.その後,筆者は米国の大学で理学療法を学ぶ機会を得たが,それがスポーツ外傷・障害にも有用であることを知り,以前よりいわゆるスポーツ医学における理学療法の存在価値については認識していた.
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