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Ⅰ.緒論
理学療法の職域拡大への展望について考えるとき,理学療法の機能をもう一度考えなおしてみる必要があるのではなかろうか.
理学療法士及び作業療法士法で規定されている定義は「理学療法とは,身体に障害のある者に対し,主としてその基本的動作能力の回復を図るため,治療体操その他の運動を行わせ,および電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段を加えることをいう」となっている.
つまり,この法律でいう理学療法とは,
①その対象となる者は,身体に障害のある者であり,
②その主たる目的は,その対象となる者の基本的動作能力の回復を図ることであり,
③そのために,用いられる手段は,その対象となる者に治療体操その他の運動を行わせること及びその対象となる者に電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段を加えることである.
したがって,理学療法士は身体に障害のある者に対して,その基本的動作能力の回復を図って,日常生活または社会生活に復帰させるための医学的リハビリテーションに従事する者となっている.
このような規定のしかたは,わが国特有のものであって,法的にも理学療法の対象が,はっきりと限定して定められている.
理学療法が本来もっている機能は,もっと広いものであって,歴史的には薬物療法と同様に疾病治療に用いられてきた.つまり治療医学のなかで,薬物療法と並んで病気や外傷の治療として用いられていたのである.
ところが,昭和40年に制定された理学療法士及び作業療法士法に規定された理学療法は,きわめて狭い枠のなかに閉じ込められた.つまり,医学的リハビリテーションの治療手技として位置づけられ,疾病特に慢性疾患の治療,合併症の予防,疾患の進行防止のための治療および健康増進のための身体的適性の向上等における理学療法がもっている効果的な機能が全く除外されている.
この小論で,理学療法の対象と理学療法の場の拡大について考えてみることにしたい.
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