症例報告
淡水溺水により無酸素性脳症となった3例の臨床症状の経過並びに理学療法について
北野 嘉孝
1
,
尾崎 光
1
,
徳弘 孝子
1
1高知県立子鹿園
pp.337-345
発行日 1983年5月15日
Published Date 1983/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102858
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はじめに
溺水は7,8月をピークとして季節を問わず発生する.
昭和56年の水難事故は警察庁の統計によると3,747件発生し罹災者総数は4,359人にものぼる.うち救助された者2,001人,溺死者は2,358人(中学生以下843人),であり,我が国の不慮の事故死の第3位に位置している1).
最近救命し得た者の中に後遺症として中枢神経系の障害をきたす例がある事が報告されている.中枢神経系の障害は一過性であって時間の経過と共に回復し正常化する例と1~5),永久的後遺症を残す例がある7).
Conn8)によれば,1970~1977年に56症例中12名,21%に中枢神経系の障害があり,5名が死亡と報告している.本邦では,この種の報告ならびに後遺症治療の報告は皆無に近い.
当園では1974年より現在まで3例の溺水による無酸素性脳症(中枢神経系の障害)の治療を経験している.内2例は現在も入園中であり,1例は経過観察中である.今回は各症例の臨床症状と理学療法の経過の中間報告を行い,併せて理学療法の効果および問題点についても考察を加える.
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