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講座
運動生理学 1.総論
Exercise Physiology 1. Introduction
石河 利寛
1
Toshihiro ISHIKO
1
1順天堂大学体育学部
1Juntendo University.
pp.657-660
発行日 1981年7月15日
Published Date 1981/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102440
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Ⅰ.運動生理学の成り立ち
医学は疾病の治療が中心であるが,一般に疾病にかかっている者は安静をとっており,大ていの場合は横臥している.したがって,臨床医学では主として安静にしている人間を取扱い,動いている人間は対象外とされていた.しかし医学が発達するにしたがって,疾病の早期発見,早期治療から,さらに疾病の予防へと臨床医学の対象が拡大され,病臥安静をとっている人間から動き回っている人間が問題とされるようになった.とくに最近では,運動不足が疾病の原因の一つとして重要視され,また運動が治療の一環を担うようになって来たので運動生理学に関する関心が一段と高まって来た.
臨床医学で運動に関心が寄せられる以前に,運動生理学はまず労働の科学として研究者の対象となった.すなわち,18世紀後半から始まった産業革命は産業労働者を増加させたが,とくに,鉄鋼労働者や炭坑労働者のような重筋労働者の増加に伴い,重筋作業における生理学的変化が労働者の健康と産業生産の向上のために注目された.このような状況下でドイツのルール地方にあるドルトムントにマックスプランク研究所がつくられて,労働生理学に関する専門雑誌Arbeitsphysiologieの第一巻が発刊されたのは1928年であった.この雑誌はその後2度改名して現在European Journal of Applied Physiology and Occupational Physiologyとして運動生理学の中核をなす専門誌の一つに数えられている.
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