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はじめに
地域リハビリテーション(以下リハビリと略す)活動ということばを耳にし口にして久しい.我々のPT,OT学会においてもその実践報告(主として医療面)が年々数を増してきていることは喜ばしいが,その一方ではいまだもって閉鎖的な病院・施設におけるPhysicalな問題のみを延々として追求し,あげくの果てはプラトーに達したというひとことで自らの役割を終った,と自己満足している臨床仲間が数多くいることも事実である.我我PT,OTもある意味では細かく専門化していく職種であることには異論はないが,絶対数不足という,何年経っても解決され得ないことを楯にとって,いつまでも地域社会の求め(例えば施設中心主義の医療や福祉の反省,あるいは福祉経済学的見地からの見直しの必要性など)から,PT,OTが目をつむるわけにはいかない時期にきていると思う.そしてまた,リハビリ活動というものを原点に立ち返って考えるならば,地域リハビリ活動というものは,病院・施設のリハビリの行きづまりの結果生れ出たものではなく,本来は病院・施設サイドと地域サイドとの同時スタートであるべきものが,制度的には行政側の怠慢もあろうが,意識的には,我々リハビリに携わる者の側が医療的ベースを出発点としているところにも,地域リハビリ活動の遅れの原因があるわけで,ある意味では,我々の側にも自己反省が必要ではないかと著者は考えている.その理由はリハビリ活動とは本来マクロ的視野に立つ活動領域であり単なる病院・施設におけるPhysicalな問題解決だけでは決して障害をもつ彼や彼女のいわゆる全人間的復権1)はあり得ないということを,リハビリに携わろうとする者は,最初のリハビリ講義の中で聞いたはずであって,リハビリ領域に身をおく,PT,OTは,障害をもつ彼や彼女が,病院や施設で受けられると等しいだけのリハビリサービスを,地域や家庭にあっても受けられるような配慮や体制づくりを,常日頃考えていく姿勢が大事であり,今やすでに行動に移すべき時期にしては少し遅きに失した気もしないでもない.
今回表記テーマで執筆の依頼を受けたが,この種のテーマに関しては,過去すでにその活動をより早くから実践し,その成果をあげておられる先輩諸氏から我々PT,OTに対しても有益な示唆を与えてくださっているので,二番煎じ的な面も免れないが,前に触れたように,地域活動に対する考え方が読者の中にも全くその必要性を感じていない人,また必要性は認めながらも,実際の活動の進め方が解らない人,実際活動を進めながら,問題をかかえている人などと多様であると考えるが,著者自身は今年の4月からそれまでの病院に所属しての地域活動から,地域リハビリ事業を行う主体である東京都板橋区衛生部という行政組織の中にその所属を移し,本格的に「脳卒中在宅リハビリ事業」にとり組んでいるので,その立場から,過去の地域リハビリ活動や板橋区の事業を踏まえて,その必要性やチームワークのあり方にふれてみたいと考えている.
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