- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
東京都の精神医療状況をみてみると,人口11,675,852人に対し,精神医療関係は112施設,ベット数は約23,700床である(S52年1月,都総務局統計部調べによる.)その中でOTの加入施設は10施設で,加入率9%と非常に僅少である.これは精神医療界にたずさわる他職種と比較して全く比べものにならない程の最低数値である.このことは組織的活動どころか1施設内での存在すら危ぶまれる状況である.OTの誕生が浅いという致命的な原因が起因していると思われるが,余りにもその格差が大きいことは,医療活動以前の問題であるかもしれない.この現状の中で1人1人のOTの果たす役割とその責任は重大である.
世田谷リハビリテーション・センターが開設されて早や7年目を迎える.開所当初の試行錯誤の時代もさって,これからは何等かの方向性が求められる時期でもある.したがって,今迄の過程の結果として,種々再検討しなければならない問題が山積しているのが現況である.当初,地域性についての検討がなされた時,対象は全部であることから,かなり広域に渡る利用があるのでないかと予測されていた.今年9月の統計によると,宿泊部門は全都にまたがった利用であったが,通所部門(職能訓練・ディ・ケア)に限り,世田谷を中心とした半径10km円内の利用者が全体の半数強に達し,かなり近況の利用者が多いことが伺われる.このことの原因を探ってみると①遠距離になると朝早いから,ラッシュにあうから,電車通路が覚えられないから等の物理的理由の外に②かかわりの困難性が上げられる.即ち病状不安定者,日常生活の指導を要する単身者,家族調整及び職場開拓等々の援助に対して我々の手足の動く距離は自ずと近接利用者に限られてくる.
御存じの通り都として独立した中間医療施設は当センターだけである.しかし最近は公立民間をとわず,慢性化にある疾患の特徴からか,施設の中で社会復帰ごとにアフターケア活動に力を入れる傾向にある.ディ・ケア部門の併設をあっちこっちできかれるのもその良い例であろう.
当センターで開設当初からかかわりあっている事例を2例紹介し,ディ・ケア部門での活動・運営が退所後,利用者・家族・地域にどう影響されているか,又利用者側からは,地域に,或いは我々に何を期待しているのかといった点を注目してみたい.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.