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Ⅰ.はじめに
「作業療法における治療効果を“学習”という見方からとらえたらどうなるであろうか」ということが,現在私にとって興味あるテーマの1つである.
たとえば,脳性マヒ児の治療において強調されていることは,異常な姿勢-運動パターンというものを抑制し,できるかぎり多くの生得的な正常基本運動パターン(頭部および体幹の立ち直り,上肢による支持,回旋,平衝反応のようなもの)を促通するということである.このことは,セラピストが感覚入力に対する子どもの運動出力を制禦したり導いたりすることによって,子どもに正常な感覚-運動経験を与え,最終的には,子どもが,自分で運動を制禦することを学習するように徐々に,かつ系統的に介助を減していくようにすることであると言える.
同様のことが,CVAによる片マヒの患側の訓練にもあてはまるであろう.
OTが,脳性マヒ児やCVAによる片マヒ患者など中枢性疾患に対して行うファシリテーションテクニックによる訓練は,上記の正常な感覚-運動経験を土台にした運動パターンの学習の問題とみることが出来る.
また,ADLに多くの困難をもち,精神発達遅滞をもった重症心身障害児に対して,セラピストが,ADLの改善のための訓練をする.このことは,食事動作,衣服着脱動作,排泄動作などの動作学習の問題といえる.
上肢切断者に対する義手装着訓練において義手の着脱,肘を曲げる,のばすなど前腕のコントロール,手先金具の作動,つかむ,はなす,などの訓練は,基本動作の学習の問題である.
スプリントや自助具などの使用や車椅子の操作,トランスファーなども同様に,学習又は再学習の問題であると言える.
以上のように“学習”という観点からみると「作業療法における治療とは,障害者の行動を変容させる試みであり,より適応的な行動の学習又は再学の過程である」とも言えるのではないか.
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